誰にも気づかれない場所で、それでも続ける人【第5話】
大きなお城より、心に残った小さな家
この村に来て、
13日が過ぎました。
最初は誰も知らない村でした。
けれど少しずつ、
顔見知りの人が増えてきました。
挨拶を交わす人。
立ち話をする人。
「また来たよ」と声をかけてくれる人。
気づけば、
村を歩くのが前より楽しくなっていました。
今日も出かける前に、
村の人たちへ挨拶をしました。
「おはようございます」
すると、
あちらこちらから声が返ってきます。
「おはよう」
「いってらっしゃい」
「今日もいい収穫があるといいね」
その言葉が嬉しくて、
よしみは籠を持って歩き始めました。
小道を歩いていると、
小鳥たちがちょこちょこと飛び回っています。
まるで
「こんにちは」
と挨拶してくれているみたいです。
こちらには、
大きなミミズ君。
正直、
ちょっと苦手です。
恐る恐る、
「こんにちは」
と挨拶をして、
そそくさと通り過ぎました。
その先には、
かわいい花が咲いていました。
いつもなら見過ごしてしまうような花です。
でも今日は、
なぜだか足を止めてしまいました。
「こんなところに咲いていたんだ」
初めて見つけたような気持ちになりました。
さらに歩いていくと、
畑が見えてきました。
トマト。
きゅうり。
なす。
いろいろな野菜が元気に育っています。
畑仕事をしていた人が、
こちらに気づいて手を振りました。
「おはよう」
そして、
収穫したばかりのトマトときゅうりを手渡してくれました。
「よかったら持っていきな」
「ありがとうございます」
よしみは嬉しくなりました。
籠の中に、
トマトときゅうりが入ります。
畑の人に手を振りながら、
また小道を歩き始めました。
村の小道をのんびり歩いていると、
一軒の小さな家が目に入りました。
豪華なお城でもなく、
人が集まる広場の近くでもありません。
少し道を外れた場所に、
ひっそりと建っていました。
家の前には貼り紙(投稿)がありました。
新しい貼り紙です。
昨日も見た気がします。
その前の日も。
そのまた前の日も。
どうやら、
毎日新しい言葉を書いているようでした。
よしみは周りを見渡しました。
でも、
足跡はありません。
誰かが立ち止まった形跡もありません。
不思議でした。
それなのに、
その家からは寂しい雰囲気がしなかったのです。
むしろ、
窓の向こうには、
あたたかな時間が流れていました。
まるで、
今日も当たり前のように言葉を書き、
今日も当たり前のように貼り紙を出している。
そんな空気が流れていました。
「なんで続けられるんだろう」
よしみは立ち止まりました。
もし自分だったら。
誰も来なかったら気になる。
読まれているのかな。
つまらなかったのかな。
そんなことばかり考えてしまう気がします。
実はこの村に来て間もないころ、
自分の張り紙に自分で「いいね」を押していたこともありました。
誰も押してくれなかったから、
せめてひとつくらいはと思って。
それでも反応がないと、
今度は、
この記事なんて最初からなかったことにしよう。
そう思って、
そっと削除したこともあります。
誰にも気づかれないように。
今思えば、
ちょっと笑ってしまいます。
でも、
あの頃の自分は案外本気でした。
だからでしょうか。
立派なお城よりも、
その小さな家のほうが気になりました。
たくさん人が集まる場所よりも、
その家のほうが心に残りました。
きっと、
この人は結果ではなく、
今日という一日を大切にしているのでしょう。
誰かが来る日も。
誰も来ない日も。
変わらず貼り紙(投稿)を出している。
そんな姿が、
なぜだか心に残ったのです。
その人の貼り紙は、共感する言葉が書かれていました。
よしみは、
そっと「いいね」を押しました。
そして何事もなかったように、
また村を歩き始めました。
翌日。
自分の張り紙を見ると、
ひとつの「いいね」が届いていました。
名前を見ると、
昨日立ち寄った、
あの小さな家の人でした。
よしみは思わず笑顔になりました。
もちろん、
本当のことは分かりません。
でも、
まるで
「訪ねてくれてありがとう」
と言ってもらえたような気がしました。
それだけなのに、
なんだか嬉しくなりました。
そして、
よしみは思いました。
ひとつの「いいね」に
一喜一憂する人ではなく。
いいねがあっても、
なくても、
今日も言葉を書き続ける人になろう。
あの小さな家の人のように。
誰かと比べることなく。
自分のペースで。
ひとつずつ。
言葉を置いていこう。
今日という一日を大切にしながら。
村には、
こんな素敵な人もいるんだ。
そして、
こんな人がいる村なら、
もう少し歩いてみたい。
そう思いました。
今日の収穫は、
籠いっぱいの思い出でした。
小鳥との挨拶。
ちょっと苦手なミミズ君との遭遇。
道ばたで見つけた花。
畑の人からもらった野菜。
そして、
誰にも気づかれない場所で、
今日も言葉を書き続けている人との出会い。
よしみは、
籠いっぱいの思い出を抱えながら、
家路につきました。
最後まで読んでくださり、
ありがとうございました。
村にはまだ、
たくさんの人や物語が隠れています。
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よしみさん。はじめまして、みうと申します。
この道であってるのかな?と不安になっていた今の私にそっと巡ってきた記事でした。
遠回りばっかりですが前を向いて進んでいきます。
ありがとうございます😊
よしみさん、おはようございます😃
素敵な物語💓
景色を見たり小さな出会いに気づいたり。いいですね。
リアルでもあるはずがスルーしてしまうので、気づきたいと思うようになりました。
ありがとうございます😊